人は「選ばなくなる」のか。―「おまかせ」が価値になるとき―

販売企画部の野﨑です。唐突ですが、私は「選ぶこと」が好きです。
洋服も、旅行も、食べるものも、自分で選びたい。人に決められるのは、どちらかというと苦手です。

……なのに、ガチャが好きです。何が出るか分からないのに、お金を払う。考えてみれば、ずいぶん矛盾しています。

しかも以前、自分では洋服を選ばず、プロが選んだ洋服が届く「airCloset(エアークローゼット)」を利用したこともあります。サブスクリプションという仕組み自体は、実はあまり得意ではありません。それでも、「自分では選ばない洋服が届く」という体験には興味がありました。

選ぶことが好きな私が、なぜ「選ばないこと」にお金を払ったのでしょうか。

前回のブログでは、「人は『人』から買うのか。」について書きました。今回は、その続きです。

「選ばない消費」が増えている 

旅ガチャ、酒ガチャ、本ガチャ。何が届くか分からない商品やサービスに、あえてお金を払う人が増えています。少し前まで、買い物とは「比較して」「検討して」「自分で決める」ことだったはずです。ところが今は、「選ばなくていい」こと自体が、一つの価値になり始めています。なぜなのでしょうか。

選択肢が増えすぎた。

ネットショップを開けば、商品が何百、何千と並びます。旅行先を探せば、ホテル、観光地、飲食店、口コミ。洋服一つでも、ブランド、色、サイズ、価格、レビュー。

選択肢が増えることは、本来なら便利なことです。でも、増えすぎると「もう誰か決めて!」と思うこともあります(笑)。

選べる自由が増えた一方で、私たちは「選ぶ疲れ」も感じるようになったのかもしれません。

airCloset(エアークローゼット)の体験で分かったこと

コロナ禍の頃、「あなたのスタイリストがつきます。毎月3着が届く。気に入らなければ交換できます」という広告を見かけました。

「どんな仕組みなのだろう」「自分では選ばない服が届くのは、ちょっと面白そう」。そんな興味から、利用システムを調べ、試してみました。 

登録時には、普段着ているブランドや着用シーン、パンツ・スカート・ワンピースなどの好みを細かく入力します。その情報をもとに、スタイリストが洋服を選んでくれる仕組みです。

そして、最初の3着が届きました。正直な第一印象は、「う~ん……なんか違う。」でした。

でも、ふと思ったのです。自分で選ばないために申し込んだのだから、まずは着てみよう、と。すると意外にも、周りからは「いつもと雰囲気が違うね」と評判が良かった。それは「似合わない」という意味ではなく、自分では選ばなかった服に出会えたという、新しい発見でした。

ただ、次の服を受け取るには、届いた服を返却しなければなりません。「忙しい人におすすめ」と聞いて始めたものの、私はその返却作業がだんだん面倒になってしまいました。

ついには数か月、新しい服を受け取らないまま月額料金だけが引き落とされ、「これなら自分で買った方がいいな」と思い、退会しました。この体験で改めて分かったのは、私はやっぱり「選ぶこと」が好きだということです。洋服もネットで買うより、お店で見て、触って、試着して選ぶ方が好きです。

そういえば昔は、店員さんが試着室へ「これも似合うと思いますよ」「この色にも挑戦してみませんか?」と、自分では選ばなかった洋服を何着も持ってきてくれました。最近は、そんな接客が少なくなったように感じます。押しつけにならないためなのか、お客様の選択を尊重する接客に変わったのか。それは分かりません。でも考えてみると、あの頃の店員さんも、私の代わりに「選んでくれる人」だったのかもしれません。「選ばない」ことには、ラクさだけではなく、自分の選択肢を広げてもらう面白さもある。そんな経験をしておきながら、私は今でも「選ぶこと」が好きです。

そして、ガチャ好き

出張先でご当地ガチャを見つけると、つい足が止まります。

何が出るか分からない。当たりならもちろんうれしいし、少し期待と違っても、それはそれで話のネタになります。

欲しいものを確実に買うのとは違います。

何が出るか分からない時間も含めて楽しんでいる。

つまり私は、「選ばない」ことで偶然との出会いを買っているのです。

「選ばない旅」まで商品になる

もう15年ほど前になるでしょうか。友人親子と「ミステリーツアー」に参加するのが、ちょっとしたブームになった時期がありました。今も大人気のようです。ぜひ一度、検索してみてください。

東京駅や新宿駅のバスターミナルに集合し、行き先が分からないまま出発します。自分で選ぶのは、ミステリーツアーに参加することだけ。高速道路に入ると、「中央道だから山梨方面かな」「関越道なら埼玉か群馬かな」と想像が膨らみます(笑)。

正直、完全なミステリーとまではいきません。それでも、自分では選ばなかったであろう名所や食事処へ連れて行ってくれました。

当時、小学生だった息子と、友人親子と一緒に、年に1、2回参加しました。 団体行動で、決められた時間内に多くの場所を回る旅でしたが、移動中は眠れますし、子どもの着替えもバスの中でできました。唯一の悩みは、「もう少しここにいたい」ができないこと。それでも、気に入った場所には、後日あらためて出かける楽しみが生まれました。どこへ行くか分からない「ワクワク感・ドキドキ感」と、自分では見つけられなかった場所に出会えたのです。

「明日、ふくしまに行ってみない?」

このブログを書いている時点では、9月26日(土)・27日(日)に浅草寺境内で開催するイベントの準備を進めています。公開時にはすでに終了していますが、今回は、インバウンド向けの面白い企画も予定しています。このイベントは、東日本大震災から15年の節目に、これまでの支援・応援への感謝と、復興の今を伝えることを目的としています。イベントをきっかけに福島県、特に浜通りの十二市町村エリアを知ってもらいたい。知られていないふくしまの魅力を知ってもらいたいのです。その中で、海外からの来場者を対象に、「明日、ふくしまに行ってみない?」(仮)という初めての企画を実施します。集合はJRいわき駅。そこから先は震災復興を学ぶホープツーリズムへご案内(無料)。

通常の旅行なら、「どこへ行く?」「何を見る?」「どのルートにする?」と自分で決める。

でも、「いわき駅まで来てください。その先は、お任せください。」という旅がインバウンド客にどう伝わるか。特に、初めて福島を訪れる外国人にとっては、自分で選べないからこそ、地域を知る人に任せる価値が生まれる。難しいことではない。私たちが海外旅行に行って、現地でオプショナルツアーに参加する感覚と同じです。日本で行き先を決める人もいれば、現地でガイドブックやネット、現地の人におすすめを聞いて決める人もいます。※私は後者。だからこそ、いわき駅から無料で参加できるこのツアーには多くの方が手を挙げてくれるような気がしています。 次回のブログで結果を報告しますね。

そしてAIは「選ぶ」を変える

これまでの「おまかせ」は、人が選んでくれるものでした。店員がおすすめする。スタイリストが洋服を選ぶ。旅行会社が旅を組み立てる。

一方、AIは、検索履歴や購入履歴、好み、行動などから、「あなたは、これが好きでしょう?」と提案します。しかも、使えば使うほど、その人の好みを学んでいきます。

そのうち、「自分で探すより、AIに選んでもらった方が早い」と思うことが、当たり前になるかもしれません。

楽天市場やファッションブランドのサイトで、一度商品を検索すると、次に開いたときには、自分の好みに近い商品が「おすすめ」として表示されます。「どうして私の好きなものが分かるの?」と思うほど、よく似た商品が並ぶこともあります。

考えてみれば私たちは、すでに日常の買い物の中で、AIやレコメンド機能に「選んでもらう」体験をしているのです。

「選ばない」は、選択をやめることなのか 

私は、そうではないと思います。airClosetに洋服を任せるなら、「このサービスなら」という信頼が必要です。旅行を任せるなら、「この会社が企画した旅なら」という信頼が必要です。AIに選んでもらうなら、「このAIの提案なら」という信頼が必要になります。

つまり私たちは、「誰に選んでもらうか」を選ぶようになるのではないでしょうか。

まとめ

人はこれまで、「何を買うか」を選んできました。そして前回は、「誰から買うか」について考えました。これからは、もう一つ。「誰に選んでもらうか」という選択が加わるのかもしれません。

AIが自分以上に自分の好みを理解し、商品も、洋服も、旅行先も選んでくれる。そんな時代になったら、私たちは「自分で選ぶこと」をしなくなるのでしょうか。私はまだ、選ぶことが好きです。

でも、「選ばない消費」は、選択を放棄した消費ではなく、選択を委ねる相手を選ぶ消費なのだと思います。そう考えると、「ふくしま市場」にも、まだ新しい売り方があるのかもしれません。お客様に選んでいただくだけでなく、私たちが選び、提案する。そんな新しい販売の形も考えていきたいと思います。