災害時の初動で重要になるのが、「いま、どこで、何が起きているのか」を早く・広く把握することです。台東区では、災害時の情報収集体制を強化するため、当社と「災害時等における無人航空機の活用に関する協定」を締結し、訓練を通じた運用体制づくりを進め、台東区役所職員による”ドローン部隊”を発足しました。今回は、台東区ドローン部隊の担当である松田様にお話をお伺いしました。
聞き手:Ooteyama ライター:Ooteyama
普段の業務について教えてください

日頃、台東区の危機・災害対策課で働いています。
普段の業務は、災害時に活用するシステムや防災アプリの管理・運用、町会や地域と連携した避難所訓練の実施などが中心です。
そのうえで更なる業務として、ドローン部隊の管理・運営も担当しています。
災害時の情報収集に必要な体制や手順を整理し、訓練で検証しながら現場で使える運用に落とし込むという業務も行っています。
ドローン部隊結成のきっかけを教えてください
令和5年2月に実施した台東区とスペースワンさんの協定式の際に、庁舎の屋上からドローンを飛行していただきました。職員が「庁舎屋上からの映像」を見たのは、あれが初めてだったと思います。そのとき高い地点からの映像収集は、災害時に非常に役立つと実感しました。そこから、協定事業者だけではなく、区職員自身も機体と操縦スキルを持つことで、情報収集能力をさらに高められるのではないか、と考えるようになりました。そうした背景があり、令和6年6月にドローン部隊が結成されました。


協定を結ぶ際に、区として重視したことは何でしたか?
過去の災害を通じて、ドローンを活用した情報収集が各地で少しずつ導入され、現場での価値も認識されてきたと思います。
台東区としても、災害時の情報収集を進めていく必要があると考えました。
協定を締結するにあたり、これまでの実績や安全に飛行できるかはもちろんですが、区内事業者でスペースワンさんがいらっしゃることは非常に大きかったです。
発災時に「すぐ駆けつけてくれる」という安心感は、災害対応ではとても重要です。また国家資格が取得できるスクールがあったことも大きかったです。

資格取得の講習(座学・実技)を受けた率直な感想は?
本当に親身になって教えていただきました。
台東区の職員3名のために講習の機会をつくっていただいたのもありがたかったです。
座学では、法令、機体の特性、プロポ操作といった基礎から丁寧に教えていただきました。実技も、カリキュラムに沿って教えていただきながら、訓練に直結する実践的な観点も学べたのが印象に残っています。「資格を取るため」だけではなく、その後の訓練・運用につながる形で学べたと思います。
実地講習をはじめるとき、正直、最初は「恐怖心」のほうが強かったです。
自分が操作した機体がプロペラで回って上空に上がっていくのは、車の運転とはまた違う怖さがあります。
一方で、講習を通じて一番強く感じたのは、安全管理を第一に置くことの大切さです。訓練などでスペースワンさんが安全管理を徹底して飛行している様子を見ていたので、自分たちも同じ姿勢で運用していかなければいけない、と改めて感じました。

1年間の訓練で、区としてアップグレードされた実感はありますか?
あります。資格を取った直後は「飛行させること」が目的になりがちでしたが、この1年で「飛行した映像を、災害時にどう活かすか」という視点を訓練の中で持てるようになりました。
たとえば、映像伝送の方法、映像を視聴する場所、視聴側から操縦側へ指示を返して飛行を変えていく流れなど、単なる操縦技術に加えて、災害時に活かすための体制が整ってきた実感があります。
もう一つは、シンプルに操縦士として自信がついたことです。
屋外訓練(水防訓練など)を重ねることで、現場に近い環境での運用に慣れていけた一年だったと思います。今年の2月12日には、台東区役所庁舎屋上直上の飛行訓練も実施しました。

今後の課題や改善点はありますか
課題は「安全管理に関する声掛け・連携」です。
屋外だと声が通りづらい場面があり、操縦士と補助者の意思疎通が難しくなることがあります。
大きい声を出すのは大前提ですが、風が強い日など条件が悪い時にどう声掛けをしていくか。
補助者との連携を、もっと標準化していく必要があると感じています。

今後の展望を教えてください
現在は、操縦士3名・機体2機の体制で動いています。
来年度は操縦士を追加育成し、体制を強化していく予定です。
「いつ発災しても対応できる」ように、技術を上げ、継続的に維持していくことが今後の大きなテーマになります。
また、庁舎屋上での飛行に加えて、被害が大きい箇所へ機体を持ち出して飛行させて情報収集力を高める運用も必要になると考えています。

他の自治体へ、ドローン活用のメッセージをお願いします

都市部では高層ビルが増え、従来の固定カメラ等による映像収集が難しくなってきているという課題があります。
そうした中でドローンは、公有施設の屋上などを起点に、高所から状況確認ができる有効な手段だと感じています。
都内のような環境でも、今後さらに活用が進んでいくと思います。台東区ドローン部隊として体制を強化しながら、区民の皆様の安全を守る役目を果たしてまいりますので、他の自治体の皆様にもぜひご注目いただければ幸いです。
インタビューを終えて
災害時の支援協定をきっかけとして、訓練を担当させていただきましたが、台東区の取り組みは、「飛ばせる」ことをゴールにせず、訓練を通じて“災害時に活かす体制”へと視点を進化させている点が印象的でしたし、また、非常に真剣に訓練にも取り組んでいただけました。
部署を横断して選抜されたドローン部隊の皆様の安全管理を最優先とした、映像の見せ方・指示系統・役割分担まで含めて積み上げていくプロセスは、これから取り組む自治体にとっても参考になるのではないでしょうか。
スペースワンとしても、協定に基づく訓練支援を通じて、現場で回る運用体制づくりに引き続き伴走してまいります。
団体情報
団体名:台東区役所
部署:総務部 危機・災害対策課
