株式会社SeaChallengeは、2002年創業の港湾を中心とした水中調査の専門企業です。同社は、スペースワンが扱うCHASING製水中ドローンをいち早く現場に導入し、従来の潜水調査と組み合わせた効率的な手法で近年急速に成果を上げています。30年の潜水業界経験を持つ永井代表に、水中ドローン導入の経緯と今後の展望についてお話を伺いました。
聞き手:Otani ライター:Otani

これまでのキャリアについて教えてください
もともとは沖縄でホテルマンをしていました。そこでダイビングに出会い、仕事にしたいと思って働きはじめたのが、横浜の潜水会社でした。潜水業界は大きく2つに分かれていて、建設系の工事潜りと調査潜り。私が入ったのは調査に特化した会社で、水中調査の老舗でした。1994年に潜水士として入りましたが、そこでナローマルチビームやROV(水中ドローン)に触れる機会があって。当時の運輸省が保有して、あまり使われていなかった水中ROVを借りて、東扇島の離岸堤の調査や第三海堡の撤去物を利用した漁礁調査などを行っていました。おそらく、国内でもROVが業務として使われた初期の事例だと思います。それがROVとの最初の出会いですね。

ROVの本格的な導入はいつごろですか?
その後、2002年に独立したのですが、しばらくは潜水業だけでした。転機は約10年前ですね。国土交通省がROVの実証実験コンペを開催するということで、採択されると国交省直轄の複数のダムで使用されるというものでした。「これは!」と思ってすぐに応募したら、私が一番最初だったんです。で、その下が国内の大手ゼネコンや世界的なメーカーが続くという…(笑)。最初はオープンソースのROVで参加したんですが、周りは数千万円クラスの機器を持ってきていて、こんな小さなものじゃダメだと(いわれた)。
それが悔しくて、リベンジとして翌年の第2回目も応募しました。中国メーカーのROVを6万ドルでオーダーメイドして挑戦したんです。ところが水中に入れた瞬間に故障してしまって。結局、従来の吊り下げ式カメラでしのぎましたが、あとで調べたら単なるケーブルが抜けていただけで。数百万円使って大恥をかきました(笑)。

CHASINGの水中ドローンとの出会いはいつごろでしたか?
それで一度ROVから離れていたんですが、2018年ごろにCHASINGのGladius(グラディウス)を見つけました。多分ネットだったと思います。最初はスペースワンさんじゃなくて、他のところから購入しました。グラディウスってすごいメタリック感があってでカッチリしているじゃないですか。あれが見た目も良くて、買ってみたら数十万円程度でしっかり動く。「すごいな」と思って、業務で使いたいと思ったんです。

実際に業務で使い始めていかがでしたか?
お客さんからすれば、まったく未知のものなので、最初はすべて無料で行いました。とにかく普及させるために、「こういうのがあるけど、どうでしょうか」といった具合に、地道に積み上げていったんです。「そんなの使えるわけがない」と言われて、なかなか受け入れてくれないんですよ、当時は。それが悔しくて、とにかく事業にしてやろうという気持ちで進めていました。
状況が変わりはじめたのが5年前の2020年ごろで、マネタイズできたのが3年前です。3年ほど前に関係官庁が「今後5年間で、潜水調査や目視調査など人でやっているものの一部をロボットに置き換える」と発表したんです。水中はROV(水中ドローン)、陸上目視はUAV(ドローン)に変えるという方針でした。それで流れが変わりました。他省も本気になって、地方自治体も倣うようになったのが2年前。今もまだ100%現場の理解が得られてはいません。「そんなもので見られるのか?」という意見もあります。でも、繰り返し実施して結果を出している段階ですね。
水中ドローンを使った効率性はいかがですか?
見るだけであれば、断然水中ドローンの方が効率的です。潜水士が例えば300mの護岸で水深15mを全部見るとして、本当に全部見られるかといえば、環境にもよりますが難しい場合もある。一方で水中ドローンは確実に全部記録できるんです。ビデオで撮影して、全部網羅できる。スピードもダイバーと変わりません。去年実証実験も行って、10日間、ダイバーがビデオカメラを持って撮影したものと、水中ドローンが同じように撮影したものを比較しました。
ダイバーはどうしても映像がブレやすく、クオリティにバラつきが出ますが、とくにCHASINGの水中ドローンは姿勢制御に優れているので、安定して撮影できます。今後、DVL(ディーブイエル:水の流れを検知し、水中ドローンの位置を安定させる機器)などが実装されてくれば、さらに優位性が高まると思います。本当にCHASING製品はよくできているので、「CHASING M2 PRO」以外は全機種を持っています。とくに「CHASING M2 PRO MAX」は現場で大活躍するのでお気に入りですね。

収益性についてはいかがでしょうか?
大きな声では言えませんが、ROVを始めた10年前から5年間で、総額数千万円投資しました。
1円にもならないので、周りからは「いい加減にしろ!」と言われながら(笑)。
ですが、この2年で回収できました。8年間回収できなかったものが、この2年で一気に回収できて、それ以上になっています。
現在抱えている案件だけでも、神奈川県内をはじめ現場だけで10件以上、そのうち4件は水中ドローンの案件です。正直、手が回らないほどの状況ですね。CHASING製品やスペースワンさんのおかげで、本当に貢献していただき、確実に大きな収益になっています。
スペースワンを選んだ理由を教えてください
最初はCHASING製品を他の会社からも購入していました。でもスペースワンさんが一番、CHASING製品に対して真摯に取り組んでいるというか、対応がしっかりしていて。何よりみんなフレンドリーで、対応が良いんです。私たちは建設業界なので、硬い雰囲気があるんですが、気軽に接していただけるし、社長もすごく探求心があって、いろんなところにアンテナを張っている。
講習会なども無料で開催してくれて、情報を惜しげもなく提供してくれるじゃないですか。普通なら有料になるようなことを、「なぜこんなにしてくれるのか」という感じで。それに対して、いただくだけではいけないので、こちらも協力したいなと思っています。

今後スペースワンに期待することはありますか?
色々やっていただいているので、とくにクレームはないですが…(笑)。強いていえば、メンテナンス体制をもっと充実していただけると良いですね。今も修理やメンテナンスは十分やっていただいていますが、「どうしても現場ですぐに使いたい」などの場合に、例えば簡単なものは代理店で修理の一次対応を行うなど、柔軟にできるといいですね。そうであれば、私たちも協力できることもあると思いますので。
あとはスペースワンさんと一緒に、最先端技術を追求していきたいですね。とくに最新機種CHASING X(CHASING社製の最上位機種)の信頼性を高められれば、将来性は非常に高いと思うんです。これまでのCHASING製品に比べると高価ですが、今後普及に伴って価格が下がってくれば、さまざまな場所で導入されるのではないでしょうか。
最後に新規参入を考えている方にアドバイスをお願いします

もし私たちのような建設業界にチャレンジするのであれば、まず建設現場のルールを学んでいただきたいです。操縦など技術的なスキルは皆さん高いんですよ、でも現場のルールを知らないので、「危険で現場に入れられない」となってしまう。それは勉強するだけでいいので、それほど難しいことじゃない。
あとは現実をしっかり見ること。業務はそれほど高単価ではありません。でも、帳票の作り方など、最終的な納品データまで対応できるようになると重宝される。それも勉強さえすれば誰でもできることなんです。そこまで突き詰めて取り組めば、この業界で成功できると思います。そうしたことを伝える場をスペースワンさんと一緒に作っても面白いかもしれませんね。
<会社概要>
企業名:株式会社SeaChallenge
代表者:代表取締役社長 永井康洋
住 所:〒240-0016 神奈川県横浜市保土ヶ谷区初音ヶ丘43-20
事 業:維持管理調査業務、ロボット事業(空撮ドローン/水中ドローン等)、潜水作業業務、CADデータ整理業務(3DCAD及びBIM/CIM等)、潜水機材及びロボット機材販売ECサイト運営
https://sea-challenge.net/
(インタビューこぼれ話)
Q趣味は?
A:仕事です(笑)。とくに機械が好きで、空のドローンもたくさん持っています。新しい機械を使って、未知の領域にチャレンジするのが好きでワクワクします。成功する確証なんてまったくなく、よく失敗するんですが、それが楽しい。そのくらいしかドキドキできないですね(笑)。
あとは車です。古いクラウンに乗っていますが、5、60万円で買って、300万円くらい修理代をかけています。今日もここに来るまでにバッテリーが壊れましたよ(笑)