ドローンとの運命的な出会い、それはCES2015の会場で

「なぜドローン事業をはじめたんですか?」

この質問をされることが、これまで何度もありました。

今日は、その“はじまりの物語”を紹介しようと思います。

今から10年前、2015年の1月、私はアメリカ・ラスベガスで開かれた「CES(Consumer Electronics Show)」という世界最大級のテクノロジー展示会に初めて訪問しました。
年明け早々の1月6日から9日にかけて開催されるこの展示会は、世界中から最新のガジェットや家電、モビリティ、スタートアップが集まり、毎年とんでもない熱気に包まれます。

正直、アメリカへの訪問も久々、そして、海外の展示会訪問も初めてでした。
興味本位で訪問したCESは完全に“圧倒”されました。広すぎる会場、飛び交う多言語、どこを見ても最先端のテクノロジー…。歩いているだけで、まるでSF映画の中に迷い込んだような気分でした。

CESの会場は非常に広いです。期間中の4日間でもしっかり回れば回りきれない大きさです。私は何も考えず、ふらふらとブースを回ったことを覚えています。
そんな中、私の足を止めたのが、フランスのParrot(パロット)社のブース。
そこにはネットで囲まれた小さなステージがあって、音楽に合わせてたくさんのミニドローンが空中を舞っていたんです。ドローンたちは、まるで生き物のように動き、きらきら光りながらリズムに乗って跳ねたり、回ったり。来場者もその場に釘付けで、私も思わず「なんだこれ…!」と思ったことを覚えています。

シールを張って体温等を測定しスマホと連動する製品

あの光景を見て、私は「これが未来かもしれない」と感じました。
ドローンって、ただ飛ぶだけじゃなくて、人の心を動かせるんだ――そう思った瞬間でした。

CES2015ではドローン製品をPRする企業もたくさんありました。他にも3Dプリンター、いろいろなテクノロジーに関連する製品が発表されていました。いくつか写真で紹介したいと思います。

実は最初はただの興味本位でこのCESに行ったんです。
右も左も分からないまま「とりあえず行ってみよう」とチケットを取り、現地に飛びました。
でも、その“なんとなくの一歩”が、人生を大きく動かすきっかけになるなんて、その時は思いもしませんでした。
(それが私のビジネスワーク?となっている海外の展示会訪問のキッカケかもです)

日本に帰ってすぐ、私はParrotの「Bebop Drone」を購入しました。今のようにドローンが広まっていなかった時代で、飛ばせる場所の制限もなく自由でした。操作は今ほど簡単じゃありません。それでも、ワクワクが勝っていました。
そして、2015年3月、近所の公園で子どもと一緒にドローンを飛ばして遊びました。上空から見る街の風景はまるで違って見えて、「空から見ると、世界ってこんなに広くてきれいなんだ」と感動したのを今でも覚えています。子どもたちもドローンに大はしゃぎで、私にとっても家族にとっても特別な時間となりました。

でもその翌月、ドローンに関する大きなニュースが飛び込んできます。
2015年4月、首相官邸の屋上にドローンが落下するという事件が起き、日本中が一気にドローンに注目するようになりました。
それは、良くも悪くも「ドローン元年」と言える出来事でした。

この事件をきっかけに、私は強く思ったんです。
「正しい使い方を広めなきゃ」
「ドローンの本当の魅力や、社会で役立つ力をちゃんと伝えなきゃ」って。

それから、私は新たにドローンを購入し、ドローン事業を本格的に仕事にしはじめました。最初のお仕事は、郡山に工場のある某海外企業の空撮案件でした。20万円と予算掲示された上で、工場を空撮したことを今も覚えています。
そして、空撮や映像制作にとどまらず、人材育成、防災や農業支援、そして子どもたちへの教育活動まで。ドローンが持つポテンシャルを、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。そんな想いで事業を広げ、今も活動を続けています。

すべてのきっかけはあのCESでした。

ドローンを見に行こうと思っていたわけでもなく、目的があったわけでもありません。
“なんとなく面白そうだから”“世界最大の展示会ってどんな感じなんだろう”――そんな軽い気持ちで、右も左もわからないままとりあえず行ってみました。
でも、あのとき「とりあえず行ってみよう」と行動したからこそ、Parrotのドローンショーに出会い、心を動かされ、そして人生が動き出しました。(それ以降、毎年訪問している展示会になりましたが、CES2025はなんと遂に出展側になりました。出展の話はまたの機会に。)

思えば、何かを変えるのに必要なのは「完璧な準備」よりも「一歩踏み出すこと」なのかもしれません。

今まで見たこともない、触ったことのないテクノロジーに出会った瞬間、人は夢を描きます。
そして、その夢を現実にするために、少しずつ動き出す。

私にとって、ドローンとの出会いはまさにそんな一歩でした。
これが私がドローンを始めたきっかけです。