こんにちは。ドローン事業部マネージャーのOTANIです。

今年ラスベガスで開催されたCESでは、ヒューマノイドと呼ばれる人型ロボットの展示が増えているのが印象的でした。ロボットが実際に歩いたり、物を持ったり、人の動きに近い動作をしたり。昨年もロボット展示はありましたが、今年は明らかに数も増え、動きも圧倒的に進化しています。(詳しくは https://spacexone.com/blog/3121/)

一方でAIというと、ここ数年はChatGPTのようなテキスト生成や画像生成の話題が中心でした。いわゆるLLM(大規模言語モデル)と呼ばれるものです。そしてCESの会場を歩いていて、この両者が融合する流れが確実に大きくなると感じました。それが「身体を持ったAI」、つまりフィジカルAIです。実はこのテーマについて考えるとき、私には以前に聞いた話で気になっていることがあります。

AIはなぜ自分から行動しないのか

AlphaGoと呼ばれるGoogleの囲碁AIが世界のトップ棋士に勝ち話題になっていたころ、ゲームAIを研究している専門家に話を聞く機会がありました。

そのとき私は「AIは自分でモノを考えて、動くようになりますか」と尋ねました。というのも、囲碁AIが人間に勝ったといっても、あくまで「囲碁で勝つ」という行動の動機は人間が与えたものだったからです。

そのときに言われた言葉が、ずっと頭に残っています。

「うーん、コンピューターの中だと難しいんじゃないでしょうか。AIは身体を持っていないから問題を抱えないので

AlphaGo VS イ・セドル 引用:Youtube

最初はどういう意味なのか、正直よく分かりませんでした。ですが後から考えると、かなり本質的な指摘だった気がします。当然ですが、人間は身体を持っています。そのため身体の内部や外部の環境との間に、常に何かしらの問題が発生します。腹が減った、眠い、寒い、疲れた、そういった身体からの信号が、行動のきっかけになっています。つまり人間の行動は多くの場合、「問題→解決」というサイクルで動いています。

一方で現在のAIはどうでしょうか。形を持たないコンピューター内のAIは基本的に問題を抱えていません。お腹も減りませんし、暑くも寒くもありません。そのためAIは基本的に呼ばれなければ何もしません。質問されれば答えるし、命令されれば処理しますが、自分から問題を見つけて考え始めることはなく、いわば“待ち”の状態です。現在のAIは高度な知識は持っていますが、ハンマーが「釘を打ちたい」と思わないのと同じで、内側から湧いてくる動機(=行動を始めるきっかけ)を持っていないのです。

身体を持ったAIは、どんな知性になるのか

ここでフィジカルAIの話に戻します。フィジカルAIとは簡単に言えば、身体を持ち、世界と直接接触するAIです。センサーで環境を認識し、判断し、行動し、その結果をまたフィードバックとして受け取る。いわば「知覚→判断→行動→学習」というループを持ったAIです。これは従来のセンサーロボットとは違います。従来のロボットは、「障害物があったら止まれ」というようにスクリプトで動き、想定外のことが起こると対応できません。一方でフィジカルAIは、状況を理解しながら判断し、解決しながら自律的に動くことを目指しています。

ここで重要なのは、身体を持つことで「問題」が自然に発生するという点です。

例えばロボットであれば、バッテリーが減る、障害物がある、環境が変化するといった問題が常に発生します。

こうした問題に直面し続けることで、AIは世界を自律的に理解し、行動しようとするのではないでしょうか。

少なくとも、現在のように「呼ばれたときだけ考える」とは少し違うものになる可能性があります。

人型AIとドローンAIは違う進化をする。かもしれない…

ここからは完全に仮説(妄想?)ですが、もう一つ気になる点があります。それは、身体の形によってAIの進化の方向が変わるのではないか、ということです。例えば人型のロボットは、人間と同じ環境で活動します。重力があり、道具を使い、人間とコミュニケーションを図る。そうすると、人型AIが発達させる知性は、人間に近いものになる可能性が高そうです。協調したり、意図を汲んだり、他者の安全を優先する社会的な知性です。

一方で、ドローンはまったく違う環境にいます。空を飛ぶドローンは、常に風や天候と戦っています。また鳥が飛んできたり、電波が途切れたり、落下のリスクもあります。止まれば落ちるという意味では、常に先を予測し続ける必要があります。もしかすると空のドローンが発達させる知性は、人間的な知性ではなく、未来予知を探求し続ける知性になるかもしれません。

また水中ドローンはさらに特殊です。水中では電波が届きません。光も弱く、水圧や水流に左右され、人間の指示を待つことができない環境です。そうなると、水中のAIは外部に頼らず、自分の内部だけで判断する自律的な知性がより重要になります。その結果、暗闇と水圧の中で長期間孤立して経験を積んだ水中AIは、悪意があるわけではありませんが、人間とはまったく異なる価値観を持ち始める可能性があるのではないでしょうか。

おわりに

AIの未来というと、「AIが人間のようになる」というイメージで語られることが多い気がします。しかし、もし知性が世界との摩擦から生まれるのだとすると、話は違ってきます。陸上、空、水中など環境によって、直面する問題がまったく違ってくるからです。人型AIは人間に近い知性を持つかもしれませんが、空のドローンや水中のドローンのAIには、人間にはない種類の知性が生まれるかもしれません。

ドローンの仕事をしていると、つい機体の性能や制度の話になりがちですが、最近はこうしたことも少し考えます。これからロボットにAIが本格的に搭載されていくとき、空や海で活動するロボットは、どんな判断をし、どんな知性を持つようになるのか。まだ答えは分かりませんが、その変化を見られるのは、なかなか面白い時代だなと思います。