【Adobe イラストレーター】生成拡張について

クリエイティブ事業部、阿部です。
前回は、「【Illustratorベータ版】ターンテーブルを使ってみた」をご紹介しました。
今回も、生成AIに関する内容となります。
すでにリリースされているAdobeイラストレーター生成拡張機能を紹介・検証をしていきます。
Adobeフォトショップの「生成拡張」では、かなり助けてもらっていますが、イラレではあまりというか全然使っていなかったということに、今更ながら気が付きました。
ということで今回はどんな感じでベクターデータを拡張(広げる)できるのかを試していきます。

使い方

使い方は、いたって簡単。
(1)まず画面上にベクター生成するための「コンテキストタスクバー」が出ているかチェック。表示されていなければ、「ウィンドウ > コンテキストタスクバー」にチェックを入れる。
(2)拡張するイラストを選択するとコンテキストタスクバーが表示されるので、「生成拡張」をクリック。
(3)参照画像のようなボックスが表示されるので、広げて、「生成」をクリック。
(4)3種類のイラストが生成される

とりあえずやってみる

◆複雑で不規則な形が重なるイラスト

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/02-large.jpg

非常に複雑なパスだが、特に問題のない拡張となった。
もともと森の写真から画像トレースしたような作りとなっている。このイラストを手作業で広げる場合、似たような画像を拾ってきて、イラストレータの機能にある画像トレースでベクター化し、うまいこと組み合わせる?という流れでつくれるのかなぁ?といった感じになる。
手作業だと、ほんの少し広げるだけでもナチュラルに見えるようにするには時間・労力がかかることは間違いない。

◆不規則なシンプルなパスのイラスト

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/03-large.jpg

こちらも森のイラストに続き、問題のない拡張となった。
このビーチのイラストは、わりとシンプルなパスでできてはいるが、不規則だったり陰影があったりとバランスよく作られている。仮に手作業で拡張する場合は、程よくコピペしバランスよく調整する必要があるだろう。

◆規則的でシンプル、近似配色の放射線(放射状柄)

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/04-large.jpg

よく使われる、2色の放射線。正直、クレジットを使用し生成拡張するにはもったいない。と思ったが意外な結果。
生成拡張自体は行われたが、放射状の柄が生成されていない。原因は、たぶん色が近すぎるからだろう。AIが色を識別できなかったのかもしれない。

◆漫画的な放射線(放射状柄)

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/05-large.jpg

漫画風の集中線やドットの飾り。生成拡張はされたが、おかしな事が起きている。拡大1を見てもらうと本来ならグレーのドットが並ぶはずがなぜかベタになってしまった。拡大2・3は、ドットがゆがんでいたり、放射線と繋がっていたりしている。

◆グラデーションと重なり合う放射線(放射状柄)

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/06-large.jpg

グラデーション設定のオブジェクトが重なり合う放射線。うまくできたかなと思いきや、おかしな箇所が何か所か見られる。グラデーションはあまりうまくいかないのかもしれない。
また放射状のオブジェクトもよく見ると少しゆがんでいる。

◆シンプルだが正確な形が重なる幾何学模様

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/07-large.jpg

正円や斜めのラインなどきれいな形の幾何学模様。
背景にはライトベージュ色に近い色のグリッドがデザインされているため、拡張すると近似色のため消えてしまい、円や斜線はゆがんでしまっている。

◆なめらかな曲線のフラットなデザイン

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/08-large.jpg

なめらかな大きな曲線部分は問題なく拡張されているが、正確性が問われる菱形や小さなオブジェクトは、うまくいっていない。

◆エッジが肝となるランダムな濃淡配色のヘリンボーン

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/09-large.jpg

左から右にかけブルーの濃淡配色のヘリンボーン柄。濃淡差があまりなかったせいか拡張エリアの右上は1色となってしまった。それぞれの直線や角部分も全然うまくいっていない。

◆グラデーションがきれいなモザイクイラスト

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/10-large.jpg

拡張された左側のエリアの三角オブジェクトもグラデの設定がなされていたが、例によって正確な形はなしていない。右側の拡張エリアは生成されたとは思えない状況。

◆濃淡と筆感のある水彩画のようなイラスト

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/11-large.jpg

あまり違和感を感じさせない拡張。濃淡と筆の感じを表現できているが、場所により濃淡がうまくいっていないところもあるが、許容範囲内かと思う。

リンク:https://spacexone.com/wp25/wp-content/uploads/2025/10/12-large.jpg

一見問題がなさそうですが、やはり細かな個所はうまくいっていない。特にこのような緻密なイラストは、生成拡張に向いていないか。

まとめ
今回、ベクターデータの生成拡張を使用してみて、気が付いた点があります。
AIは、拡張するにあたってイラストの「パス」を見ているわけではなく、画像として認識し、画像として拡張し、それからイラストに落とし込んでいるのではないかと感じました。
そのことを踏まえると、拡張に向いているイラストは、正確・緻密ではなく曖昧な形のイラスト。つまり森とか海とかの自然の景色や手書き風のイラストなど。逆にうまくいかないイラストは、直線や正円など正確な図形のもの、緻密なものなど、少しでもゆがんだりズレたりすると違和感をかんじてしまうようなイラストです。
まだまだ発展途上で使いにくい点や相性はあるにせよ、さほど生成には時間を要しないので、一旦試して相性を確認してからどうするかを決めてもいいと思いました。
そして今後、イラレの「生成拡張」に期待したいのは、パスの構成を読み取った上で、「正確なパス」を生成することです。