
クリエイティブ事業部のアべです。
グラフィックとウェブのデザイン制作を担当しています。いつも心穏やかに仕事をしたいと思っております。
はじめに
今回ブログでわざわざ紹介したいのは、8/20日にAdobe Illustratorベータの最新アップデートとなった、待望の新機能「ターンテーブル」です。
デザインの見せ方や作品の表現に、これまでとは違った可能性をもたらしてくれると、かなり話題になっています。すでにたくさんの方がブログやら動画で紹介しているので、「私が書く意味あるか?」とも感じましたが、ちょっと検体を多く見てもらおうかと思います。
ターンテーブルについて
Illustratorの新機能「ターンテーブル」は、選択した2DベクターイラストをAIが補完し、未描画部分を推測して3D的に回転表示できるベータ版の機能です。
スライダーをドラッグするだけでオブジェクトの角度を切り替えられ、生成されたパスはベクター形式を保ったまま編集することができます。
これにより、キャラクター、プロダクトなどを多方向から簡単に見せられるようになり、デザインの作業効率と表現の幅を大きく広げてくれます。
さて、何ができて何ができないのか検証していきたいと思います。
まずターンテーブルを使い方
使い方は、いたって簡単。
ベクターオブジェクトつまりパスで作ったイラストを選択し、画面左上のメニューの「オブジェクト>ターンテーブル」をクリックするとターンテーブル化し編集バーが表示されます。


ターンテーブル化すると編集バーが表示されるので、スライダーを左右に動かすと横回転し、上下の矢印をクリックで斜め上からのアングル(ふかん)、斜め下からのアングル(あおり)のイラストが生成されます。
ちなみに横回転は15度間隔で表示され0から±120度で生成されるので、表示パターンは全51種生成されています。
(シンプルなイラストでもターンテーブル化に3分以上かかるのはしかたないか。)
また、「表示を挿入」で横に複製されるので、かなり便利。

適当なイラストを用意しやってみる
◆猫のイラスト
デフォルメされた猫のキャラクター。90°の角度では、ちゃんと鼻から口元にかけ立体的に表現され、120°では背中側も作られている。感動。体のシマ柄など細かなディテールは気になるが、修正して使用できそうな生成となった。

◆ドット絵のイラスト
笑顔が爽やかな青年のピクセル風イラスト。一見問題なさそうなのだが、ドットの四角が歪んでしまっている。イラストを小さく使用するなら問題ないかもしれないが、大きく見せたい場合は修正が必須だろう。

◆よくわからない生き物
シンプルなモンスターのイラスト。想像通りの丸みのあるモンスターとなった。モンスターのイラストは不思議な形のものも多く、AIがうまく汲み取ってくれないと平べったい横顔になってしまう場合もあった。

◆イカらしき生物
シンプルなイカっぽい生き物のイラスト。イカと認識されたのか後ろ姿では、とりあえず足がたくさんついている。オリジナルイラストは背を反らしているようにも見え、生成イラストもどことなく背を反らしている。

◆シルエットがリアルなヘラジカ
複雑パスではないが、シルエットは実物の写真からパスを起こしたようなヘラジカのイラスト。オリジナルでは、重なる角があいまいに描かれているが、AIがしっかり補完しているようだ。あおり45°の角度はあまりイラストで見かけない角度なので、面白味があるイラストとなっている。

◆手書き風のラフなネズミ
再編集には非常に手間がかかるであろう手書きテイストのイラスト。オリジナルがそこまで正確な描写ではないので、生成物も手書きのラフさが表現されており、それなりに様になっている。

◆元気な2人
動きのあるシンプルな人のイラスト。この2人はグループ化されているので、もちろんそれぞれでターンテーブルが生成されるわけではない。視点が変わると一層躍動感を感じる。シンプルかつ曲線が多いので、このようなイラストとターンテーブルは相性がよさそうだ。

◆立体的な3人の小人
このイラストは、きっと優しいおじいさんとおばあさんが営んでいる、町の小さなスピーカー屋さんに小人達が、夜な夜なスピーカーを作りに来ているというシチュエーションなのだろうと予想できる。
さてオリジナルが、そもそもふかん視点のイラストなのだがどうなるか。生成物のスピーカー部分は少し歪んでいるように見える。小人達は特に問題なさそう。

◆複雑なキャラクター
手に飲み物とスケボーを持っている女の子スケーターのイラスト。生成物はそれっぽいシルエットだが、顔のアップを見てほしい、オリジナルと生成物では、明らかにディテールが違うのがわかる。服の文字も靴の柄もすごく曖昧に生成されている。なかなか思った通りにはいかない。クオリティはさがったものの、ポージングというかシルエットに関しては、イラストの角度が少しずつ変わり回転していく様子がわかる程度は保っている。

◆奥行きのある角版の自然背景
デフォルメされた植物が重なり合って奥行きを出してる自然の景色のイラスト。45°のイラストを見ると各オブジェクトはペラペラの感じがあり、ペーパーマリオや飛び出すバースデーカードなどを連想させる。うまく使えば、そういうデザインで使えるのかもしれない。
ふかんやあおりはよくわからない状態となっている。

◆奥行きのある都会の街並み
オリジナルでは遠近感を出すために、下3分の1に街灯や植木などが配置されている。上3分の2は街並みが重なる感じで描かれている。45°回転すると街並みが立体的に生成されているのがわかる。しかし四角形のオブジェクトがことごとく歪んでしまっている。また真横からの視点90°となると街灯が表示されているが、一段下にさがって描かれているようだ。つまりAIでは近くにあるという認識ではなく、一段さがった場所にあるという風に見ているようだ。

◆立体的な建物
ヘリポートがある立派なガラス張りのビル、赤と紺色の戸建てが二棟。日照権やビル風のトラブルがありそうな立地だ。やはり生成すると他同様、まずエッジがゆるんでしまっており、これを修正して、使用できるようにするにはかなりの労力がかかるだろうと思う。ふかん45°に関しては、別な建物となってしまっている。

まとめ
様々なイラストでターンテーブルを試したのですが、相性が良さそうなのは、元のイラストがシンプルで多少の湾曲やズレも問題ないような、「形としての遊び」があるもの。
逆に建物など精密に描き込まれたものは、ゆがみやズレが目立ってしまっていたと感じました。
これからの業務として使用できる場面は、多く、すんなり修正できれば、かなりの時短につながると考えられます。また多少の相性が悪かったとしても、角度を変更後に微調整したほうがいい場合もあるなあと感じることも多く、ベクターイラストをよく使う方は、ぜひ使ってみてください。