ARIVIAは“売れる”のか?シリコンバレー伝説の起業家に学んだこと②

前回、ラスベガスの展示会CESで偶然出会った伝説の日本人起業家、熊谷芳太郎さんの自宅で開発中の水上ドローン「ARIVIA」をお披露目することになったというお話をしました。今回はその続きです。
ARIVIAは“売れる”のか?シリコンバレー伝説の起業家に学んだこと①

熊谷芳太郎さんですが、ここであらためて熊谷さんの略歴をご紹介します。

シリコンバレー在住の連続起業家。法政大学卒業後に渡米し、50年以上アメリカでビジネスに携わる。これまで7社のスタートアップに参画し、そのうち5社を上場やM&Aに導いたことから「伝説の日本人起業家」と呼ばれる。特にウェアラブル機器メーカーFitbitの創業メンバーとして知られ、同社は上場後にGoogleによって約3,000億円で買収された。現在もeVTOL(空飛ぶクルマ)やウェアラブル関連企業など、スタートアップの最前線で事業開発に関わり続けている。

ご覧の通りすごい経歴の方なのですが、今もビジネスの最前線で活躍されており、詳細は言えませんが、現在は元巨大IT企業のエンジニアと一緒に画期的なデバイスの開発を行っていると仰っていました。

そんな熊谷さんがCESの我々のブースでARIVIAを発見し、「これは売れるよ」と言っていただきました。そして、その流れでシリコンバレーのご自宅のプールを使って試作機を披露することになったのですが、お披露目会の場でも「やっぱりこれは売れると思うよ。ただし…」と売れるために必要な条件をいくつか教えてくれました。そのアドバイスの内容は後ほど書くとして、まずはお披露目会の様子をお伝えしたいと思います。

大人も子供も大喜びのARIVIAショー

お披露目会は、同じく前回ご紹介した米国でコンサルタントとして活躍している佐藤さんに、現地の日本人の方を中心にお声がけいただき、大手企業の現地法人の責任者や政府機関の方、領事館の方など20名以上の方にお越しいただきました。ホームパーティ形式でしたので、ご自宅の入口に案内板とARIVIAを設置し、賑やかにお迎えしました。ショーが見られることもあり子供たちも多く来ていて、プールで浮かぶARIVIA見て、始まる前から大はしゃぎしていました。

食事や飲み物、会話を楽しみつつ、辺りが暗くなったころ、いよいよショーがスタート。音楽と一緒に3台のARIVIAが点灯し動き始めると、皆さん食事や会話を止め、興味深く魅入っていました。そして、噴水が上がると子供たちがワーっと嬉しそうに水際まで走っていき、大人の皆さんは一斉に写真や動画を撮っていました。自分たちが言うのもなんですが、夜の水面に浮かぶARIVIAのライトは想像以上に美しく、吹き上がる噴水は幻想的な雰囲気を醸し出します。まだまだ改良するところがたくさんありますが、それでも皆さん「とても良かった」と言っていただき、大人も子供も一緒になって楽しめるショーを行うことができました。

熊谷さんも「実際に夜に見ると、想像以上に綺麗だね」と褒めてくださり、ショーの間も熱心に写真を撮影していただきました。そして一方で、実際にビジネスとして売っていくために必要なことも色々と話してくれました。

ARIVIAが“売れる”ために必要なこと

アドバイスの第一に言われたのが「価格」です。現在はまだ試作段階ですので、販売価格は決まっていませんが、1,000~2,000ドル程度を想定していました。しかし、熊谷さんからは「こっち(米国)で売るなら500ドル以下だね」と言われました。正直、現時点での性能や仕様を考えるとかなり難しいのですが、熊谷さんが言うには性能云々よりもまずは「価格」だと。

「この辺りにはお金持ちがたくさん住んでいるけど、1,000ドルを超えると彼らでも買わない」とNVIDIAの役員の家だという隣家を指さしながら言いました。お金を持っている、いないに関わらず、1000ドルには心理的ハードルがあり、良い製品でも買わないということです。もちろん極論ではあるのですが、そのくらいコンシューマー向け製品の価格は重要だということです。

逆に500ドル以下であれば、あまり何も考えずに購入し、結果的に製品がダメでも諦められるので、販売数が一気に伸びるということでした。米国のマーケットは日本の何十倍もあるので、文字通り桁が違うとも仰っていました。「日本の製品は素晴らしいんだけど、作り込み過ぎてその分値段も高くなって、結果的に売れないんだよ」と残念そうに語っていました。

熊谷さんが参画中のOura Ring。コストコで見た価格も499.99ドルでした

また、いかに「機能をシンプルに、使いやすく」するかも重要だと仰っていました。Fitbit(歩数、心拍数などを計測・記録するウェアラブル端末)を作ったときも、後発、とくに中国で安価な類似品が出てくるのは分かっていたので、いかに使いやすいアプリにするかに徹底してこだわったといいます。そして手頃な価格とシンプルな使いやすさでトップシェアと取ったと教えてくれました。

ほかにも最初から完璧を求めず、とにかく早く世の中に出してフィードバックを集めることの重要性や販路拡大のためのパートナー選びの大切さ、優秀なエンジニアの上手な使い方など、実践的なアドバイスのいくつも教えていただきました。

そして最後に、ARIVIAについて「1月のCESに見たときはモックだったのに、この短期間で実際に動く試作機を開発したのは素晴らしい。実際にショー見て楽しかったし、製品化を楽しみにしている」と仰っていただき、来年1月のCESでの再会を約束しました。

まとめ

今回、短期間の滞在でしたが、熊谷さんにはさまざまな意見やアドバイスをいただき、非常に有意義なサンフランシスコ訪問でした。日本の特徴として、とにかくいい製品や完璧な製品を作ることに集中するあまり、“売ること”が後回しになっている気がします。価格や販売方法、機能をシンプルにした使いやすさなど、いただいた“売れる”ためのアドバイスをしっかりと受け止めて、引き続きARIVIAの開発を進めていきたいと思います。

おまけ
今回のサンフランシスコや前回のドバイ出張では、GoogleやAppleの本社、観光地やビーチなどARIVIAを連れて色々なところを巡ってきました。題して『旅するARIVIA』。詳しくは書けませんが、写真から少しその雰囲気を味わってください。