こんにちは。ドローン事業部マネージャーのOTANIです。
前回は、ワシントンD.C.で視察した水中ロボット競技会「International SeaPerch Challenge」の競技についてご紹介しました。約200チームが自分たちで作った水中ロボットを持ち寄り、障害物チャレンジやミッションチャレンジに挑戦。観覧席では家族や関係者が声援を送り、私自身も気づけば一緒になって盛り上がっていました。
今回はSeaPerch編の最終回。2日間の大会を通して見てみると、その面白さはプールで行われる競技だけではありませんでした。今回は、競技とは別に行われたプレゼンテーションや表彰式、そして実際に大会に参加していた各国の子どもたちへのインタビューを中心にご紹介したいと思います。
スライドを使わないプレゼンテーション
プールで競技が行われている一方、別の建物では子どもたちによるプレゼンテーションが行われていました。そこでは、自分たちがどのようなチームなのか、どんな考え方で水中ロボットを設計したのか、機体のどこに工夫したのかなどを、審査員と観客の前で説明します。
私が最初に驚いたのが、PowerPointなどのスライドを使っていなかったことです。最初は「スライドを忘れたのかな?」と思ったのですが、どうやらそうではなく、あえて自分たちの言葉だけで説明しているようでした。あとで聞くと、あえてスライドなどに頼らずに言葉で説明することで、伝える力を養っているということでした。
前々回のブログでも書いたのですが、SeaPerchではロボットを完成させることが目的ではなく、チームで役割を決め、試行錯誤しながら機体を作り、その過程を記録する。さらに、自分たちが何を考えて作ったのかを伝えるところまでが含まれています。実際にこのプレゼンテーションを見て、「SeaPerchは人材育成のための総合プログラム」という話が、腑に落ちた気がしました。

1,000人近くが集まった表彰式
2日間の競技がすべて終了すると、最後は大学内にある芝生の広場に会場を移して表彰式が行われました。広い芝生と青空の下で行われる表彰式はとても開放的で、いかにもアメリカらしい雰囲気です。
今回、私たちを日本から招いてくれたRoboNation代表のダリルさんの挨拶から始まり、その後、各部門の受賞チームが次々と発表されていきました。広場にはチームの子どもたちだけでなく、親や関係者も集まっており、感覚的には1,000人近くいたと思います。
そして、チーム名が発表されるたびに「Wooooooh!」と大歓声。競技中もかなり盛り上がっていましたが、表彰式はさらにすごい熱気でした。
とくに印象的だったのが、アメリカ以外の海外チームが受賞したときです。そのときは一際大きな歓声が上がり、国に関係なく受賞したチームをみんなで称える、ウェルカムな雰囲気が伝わってきました。
日本の大会だと、受賞者を拍手で称えるような表彰式が一般的だと思いますが、こちらは完全にイベントのフィナーレ。最後まで子どもたちだけではなく、親や関係者も一緒になって大会を楽しんでいて、2日間のSeaPerch Challengeは大盛況のうちに幕を閉じました。

参加した子どもたちが感じていたこと
今回せっかく世界中からチームが集まっているということで、会場では何組かの子どもたちにもインタビューさせてもらいました。まず話を聞いたのが、アメリカ・ペンシルベニア州から参加していた女子中学生の「Octobots」。タコをモチーフにしたオリジナルキャラクターを作り、コスチュームまで着ていて、とにかく楽しそうなチームでした。
「SeaPerchで一番楽しかったことは?」と聞くと、「大会でいろいろな人と出会えたこと。普段会えない人たちと会えるしSeaPerchのコミュニティに参加できるのが楽しい」と話してくれました。一方で、「難しかったのはチームワーク。
みんなの意見を一つにまとめたり、レポートを作ったりするのに時間がかかりました」とも話していました。印象的だったのが、「将来はロボットや海洋関係の仕事につきたいの?」と聞いたときです。
全員「いいえ、別に考えてない」と答えた上で、「私は税理士になりたい」「私は歯医者になりた」と全員がすでに具体的なビジョンを持っていたことです。まだ幼さの残る中学生の段階で、しっかり将来について考えていることに驚くとともに感動しました。

次にインタビューしたのが、中国から参加していた混合チームです。私が話した印象では、日本の子どもたちにも少し近いというか、かなり真面目に競技に取り組んでいるチームでした。
実際に話を聞くと、彼らも最初は大会の“結果”をかなり意識していたようです。ただ、「最初は順位や結果を気にしていましたが、実際にここに来て、他の国の人と交流して、大会そのものを楽しむことも大切だと思いました」と話していました。
ちなみにこのチームは、中国国内ではもともと別々の学校から大会に参加していた、いわばライバル同士だったそうで、国際大会では一つのチームとして参加していました。距離が離れているメンバーとはWeChatなどを使って連絡を取りながら準備したそうです。

また、カザフスタンから参加したという、女の子中心のチームにも話を聞きました。
大会に参加した感想を尋ねると、「中国の子たちと話したり、Instagramを交換したり、TikTokを一緒に撮ったりしました」と、とても楽しそうに話してくれました。さらに印象に残った出来事を聞くと、「カザフスタンのチョコレートをみんなに配りました。カザフスタンを知らない人も多かったので、自分たちの国を知ってもらえたのが嬉しかった」とのこと。
こうした自然な国際交流も、この大会の大きな魅力なのだと感じます。ちなみに彼女たちの将来の夢も、エンジニア、医療・薬学、バイオ、ジャーナリストなどさまざまでした。

15年間SeaPerchを見続けてきた女性宇宙飛行士

子どもたち以外にも、2025年に民間宇宙企業ブルー・オリジンの飛行士として宇宙に行ったプエルトリコ出身のAymette “Amy” Medina(メディアさん)に話を聞くことができました。彼女は約15年間にわたりSeaPerchの普及に携わっており、その魅力について熱く話してくれました。とにかく明るい方で、SeaPerchの話になると本当に楽しそうに話してくれたのが印象的です。
「なぜ15年間も続けているんですか?」と聞いてみると、「このプログラムが大好きだから」と、とてもシンプルな答えが返ってきました。その理由について、「子どもたちが成長していく姿を見ることができるのは本当に素晴らしいこと。最初は何も知らなかった子が、SeaPerchを通していろいろなことを学び、成長する姿はいつ見ても嬉しくなる」と笑顔で答えてくれました。
教えるときに意識していることについて聞くと、「まず道具の使い方や安全についてはしっかり教えます。でも、その後はできるだけ子どもたち自身にやらせます」という話もありました。失敗しそうだからと大人が先に手を出すのではなく、実際にやらせ、失敗したら自分で考えさせる。我々が受けた講義でも、団体トップのダリルさんが「競技で勝つことよりも、失敗から学び続けることの方が重要」と話していましたが、15年間SeaPerchを現場で続けてきたメディナさんからも、ほぼ同じ考え方を聞くことができました。
次は、ぜひ日本の子どもたちと!
今回、実際に現地へ行く前のイメージは「子どもたちが水中ロボットを作って競う大会」というものでした。もちろん、それ自体は間違いではないのですが、自分で実際に機体を作り、競技やプレゼンテーションを見て、参加した子どもたちと話してみると、それだけではないことが分かりました。ロボットを作る過程で失敗したり、チーム内で意見がぶつかったり、何とかそれをまとめ、人前で自分たちの考えを説明する。そして大会に来て、同じような世界の子供たちと交流する。個人的には、こうした経験まで含めてSeaPerchのプログラムなのだと思います。
今回これだけ多くの子どもたちが本気で取り組み、それ以上に楽しんでいる姿を実際に見たことで、日本でもぜひやってみたいという気持ちは強くなりました。次は視察する側ではなく、日本から参加する子どもたちと一緒に来たい。そのためにも、まずは日本でSeaPerchを知ってもらい、実際に挑戦する子どもたちを少しずつ増やしていきたいと思います。
というわけで、今度こそ、本当にSeaPerch編は終了です(笑)
ありがとうございました。では!

