「いい感じにお願いします」をどう形にする?イメージのズレを防ぐヒアリング術

営業・企画部の吉田です!
前回のブログでは、「『どうですか?』だけでは伝わらない?仕事をスムーズにする質問力」と題して、相手が答えやすい質問の仕方について書きました。今回はその続きとして、制作の打ち合わせでよく出てくる「いい感じにお願いします」という言葉を、どうやって具体的な形にしていくかを考えてみたいと思います。

チラシやWebサイト、ポスターなどの制作を依頼するとき、「明るい感じで」「親しみやすく」「いい感じにお願いします」と伝えた経験はありませんか?

一方、制作する側も、その言葉を聞いて「明るいとは、色のこと?写真の雰囲気?それとも文章のトーン?」と悩むことがあります。決して、依頼の仕方が悪いわけではありません。完成形がまだ見えていない段階では、自分の希望を具体的な言葉にするのは難しいものです。だからこそ大切になるのが、曖昧なイメージを少しずつ具体化していく「ヒアリング」です。

……と言いながら、私自身も目下修行中です。確認したつもりでも仕上がりのイメージがずれていたり、もっと早く聞いておけばよかったと後から気づいたり。失敗と反省を繰り返しながら、「最初にどんなことを確認すればよかったのか」を少しずつ学んでいます。

今回は、そんな日々の試行錯誤の中で感じた、制作物のイメージのズレを防ぎ、依頼する側と制作する側が同じゴールを目指すためのヒアリングのポイントをご紹介します。

 1.「いい感じ」は、人によって違う

「おしゃれ」「高級感」「親しみやすい」といった言葉は便利ですが、人によって思い浮かべるものが異なります。
例えば「高級感のあるデザイン」と聞いて、黒や金を使った重厚なデザインを想像する人もいれば、余白を広く取った白を基調とするデザインを思い浮かべる人もいます。「かわいい」も、淡い色のナチュラルな雰囲気なのか、カラフルで元気な雰囲気なのかによって、仕上がりは大きく変わります。

こうした感覚的な言葉を、そのまま制作に進めてしまうと、初稿を見たときに「何となく違う」ということが起こりがちです。イメージのズレを防ぐ第一歩は、曖昧な言葉を否定するのではなく、「その言葉が具体的に何を指しているのか」を一緒に探ることです。

2.最初に確認したいのは「誰に、何をしてほしいか」

色や雰囲気を決める前に、まず確認したいのが制作物の目的です。

  • 誰に見てもらいたいのか
  • 何を伝えたいのか
  • 見た人に、どのような行動をしてほしいのか

例えば、同じ地域講座の参加者募集チラシでも、「初めての人に気軽に参加してほしい」のか、「すでに経験のある人に、専門的な内容を学べることを伝えたい」のかでは、使う写真も言葉もデザインも変わります。

「どんな色にしますか?」から始めるよりも、「誰に、どのような印象を持ってもらい、何をしてほしいですか?」と確認するほうが、デザインの方向性を決めやすくなります。

3.参考イメージは「どこが良いか」まで確認する

言葉だけでイメージを共有するのが難しいときは、参考となるチラシやWebサイト、画像などを見ながら話すと効果的です。ただし、参考画像を共有するだけでは十分でない場合もあります。同じ画像を見ても、依頼する側は「色使い」が良いと思っているのに、制作する側は「レイアウト」が良いのだと受け取るかもしれません。そこで、次のように一歩踏み込んで確認します。

  • このデザインの、どの部分が好きですか?
  • 色・文字・写真・余白のうち、近づけたいのはどれですか?
  • 反対に、避けたい雰囲気はありますか?

好きなイメージだけでなく、「これは少し違う」という例も共有すると、方向性の輪郭がさらに明確になります。

4.「AとBならどちら?」で答えやすくする

「どんなデザインが良いですか?」と自由に答えてもらうより、選択肢を示したほうが希望を引き出しやすいことがあります。例えば、次のような聞き方です。

  • 落ち着いた雰囲気と、元気で明るい雰囲気ならどちらが近いですか?
  • 写真を大きく見せたいですか?情報量を優先したいですか?
  • 親しみやすさと専門性では、どちらを強く出したいですか?

選択肢があると、依頼する側も自分の考えを整理しやすくなります。ただし、すべてを二者択一にする必要はありません。「Aを基本にしつつ、Bの要素も少し加えたい」といった答えも、重要な手掛かりになります。

5.打ち合わせ後は、言葉にして共有する

打ち合わせで話がまとまったように感じても、認識が完全に一致しているとは限りません。そこで大切なのが、決まった内容を短く整理し、制作に入る前に共有することです。例えば、次のようにまとめます。

  1. 主な対象は、その分野を初めて体験する人
  2. 安心感と親しみやすさを優先し、明るい色を使う
  3. 情報を詰め込みすぎず
  4. 開催日時と申込方法を目立たせる

このように、ターゲット・目的・雰囲気・優先する情報を言葉にしておけば、デザインを判断するときの基準になります。途中で意見が分かれた場合にも、「誰に何を伝える制作物だったか」という原点に戻ることができます。

6.ヒアリングは、正解を聞き出す作業ではない

制作前のヒアリングというと、必要事項を漏れなく質問する作業のように思われるかもしれません。しかし本来は、依頼する側の中にある、まだ輪郭のはっきりしていない考えを一緒に整理する時間です。
最初から完成形を説明できる人ばかりではありません。会話を重ね、参考例を見比べ、目的を確認することで、少しずつ「今回はこの方向が良さそう」という共通認識が生まれます。
私自身、毎回これらを完璧に実践できているわけではありません。打ち合わせの後に「別の聞き方をすれば、もっと分かりやすかったかもしれない」と振り返ることもあります。ただ、その小さな反省を次の質問に生かすことも、ヒアリング力を身につけるための大切な過程なのだと思います。
「いい感じに」という言葉は、困った依頼ではなく、対話のスタート地点です。その言葉の奥にある目的や好みを丁寧に探ることで、完成後の「思っていたものと違う」を減らし、より納得感のある制作につながります。

まとめ

「明るく」「おしゃれに」「いい感じに」といった言葉は、制作の現場でよく使われます。しかし、感覚的な言葉から思い浮かべるイメージは人それぞれです。そのため、言葉だけを手掛かりに進めると、完成したときに認識のズレが生じることがあります。
大切なのは、曖昧な要望を無理に一度で決めることではありません。「誰に見てもらうのか」「何を伝え、どのような行動につなげたいのか」を確認し、参考イメージのどこが良いのか、何を避けたいのかを一緒に整理することです。さらに、選択肢を示して答えやすくしたり、打ち合わせ後に決定事項を言葉で共有したりすることで、制作の方向性はより明確になります。
ヒアリングは、単に希望を聞き取るためのものではなく、依頼する側と制作する側が同じゴールを見つけるための共同作業です。「いい感じに」という一言から対話を広げ、その先にある本当の目的を共有できれば、より伝わる制作物に近づけるのではないでしょうか。