やさしい口当たりの一杯に、28年の時間を重ねて

有限会社福島路ビール 代表取締役/吉田重男 さま

うちのビールの一番の特徴ですか?「やさしい口当たり」ですね。 そう話してくれたのは、福島市でクラフトビールを醸造する福島路ビールの工場長吉田真二さん。 黒ビールなどでは、仕込み水を変えるブルワリーも少なくない。だが福島路ビールでは、あえて軟水のまま仕込みを行っているという。 それは、「飲みやすさ」と「毎日の一杯」に寄り添うための選択だ。

聞き手:Sakura Nozaki ライター:Sakura Nozaki


福島市アンナガーデンにある福島路ビールの工場兼ショップ

福島市アンナガーデンに工場と直売所を構えるクラフトブルワリー「福島路ビール」。1997年、クラフトビールの製造免許が緩和された黎明期に誕生し、全国でおよそ70番目のブルワリーとしてスタートしました。福島の軟水を活かした「やさしい口当たり」のビールは、地元の人々だけでなく観光客にも親しまれています。その一杯の背景には、震災を乗り越えながら福島でビールを造り続けてきたブルワリーの歩みがあります。

福島路ビールについて教えてください

福島路ビールの創業は1997年。クラフトビールの製造免許が緩和され、全国でブルワリーが誕生し始めた時代に、全国でおよそ70番目のブルワリーとしてスタートしました。「今はブルワリーが本当に増えましたが、当時はまだ珍しい存在でした。ここまで続けてこられたことには意味があると思っています。」福島の地で変わらずビールを造り続けてきて、まもなく30年。現在も製造から品質管理までを家族で担いながら、現場に立ち続けています。福島でビールを造り続ける日々は、今も変わることはありません。

ビール造りのこだわりは何ですか

「うちのビールの一番の特徴は“やさしい口当たり”ですね。」そう話してくれたのは、福島路ビールの吉田社長と工場長です。黒ビールなどでは水質を変えて仕込むブルワリーもありますが、福島路ビールではあえて福島の軟水のまま仕込みを行っています。特別な一杯ではなく、日常の食卓に寄り添うビールを届けたい。その想いから、福島の水をそのまま活かした醸造を続けています。「自分たちが本当においしいと思えるビールを造る」というシンプルな想いが、28年の積み重ねの中でも変わることはありません。

工場に併設されたショップ。観光客にも人気のスポット

震災当時の状況について教えてください

代表取締役 吉田重男さん

2011年の東日本大震災は、福島路ビールにとっても大きな試練でした。原料は入らず、電気も止まり、冷蔵設備も機能しない。

ビールは“生き物”であるため、醸造や品質管理を続けることは想像以上に過酷だったといいます。

「正直、売上はほぼゼロでした。潰れてもおかしくなかったと思います。」イベント会場では心ない言葉を投げかけられたり、目の前で商品を捨てられてしまったこともあったといいます。
それでも福島でビールを造り続けるという決意は変わりませんでした。
福島で造る意味があると信じていたからです。

フルーツビール誕生の背景は?

震災後、福島路ビールは新しい取り組みを始めます。

それが福島の果樹農家との連携でした。震災で同じく苦境に立たされていた福島の農家と協力し、桃のラガー、林檎のラガー、黄金桃のリッチエールなどのフルーツビールが誕生しました。

果汁をふんだんに使用したビールは、ビールが苦手な人でも飲みやすい味わいです。

同時に、福島の果物の魅力をビールを通して伝える商品として多くの人に親しまれるようになりました。

福島の果物を使った人気のフルーツビール

スペースワンとの取り組みについて

スペースワンとの取引が始まったのは、震災後の「とにかく商品を動かす必要があった時期」でした。EC販売、復興応援企画、株主優待企画、イベント出店など、様々な形で福島路ビールの商品を届ける機会を作ってきました。「イベントに誘ってもらえたのは、やっぱり嬉しかったですね。」復興支援のフェーズは少しずつ変化していますが、福島路ビールはこれからも自分たちの力で続けられる形を模索しながら挑戦を続けています。

今後の展望について

「工場長の笑顔も、美味しさのひとつ」

福島路ビールは、これからも福島の風土や農産物を活かしたビール造りを続けていきます。

「福島だからやらない」のではなく、「福島だからこそやる」。

その想いはこれからも変わりません。

地域の農家とともに新しいビールを生み出しながら、福島の魅力をビールを通して伝えていきたいと考えています。

インタビューを終えて

今回の取材で印象に残ったのは、「やさしい口当たり」という言葉の奥にある、福島路ビールの歩みでした。福島の水で仕込み、福島の農家とともに新しいビールを生み出し、震災を乗り越えながら福島で造り続けてきた約28年。その積み重ねが、一杯のビールの味わいに自然と表れているように感じます。福島路ビールの工場兼ショップは福島市アンナガーデンにあり、観光とクラフトビールを楽しめる場所として多くの人が訪れています。ぜひその“やさしい一杯”を味わってみてください。

〈会社概要〉

企業名  :有限会社 福島路ビール
代表者  :代表取締役 吉田 重男
住所   :福島県福島市新井字横塚3-182
事業内容 :ビール、発泡酒、果実酒の製造販売
公式サイト: https://www.f-beer.com/